人生100年時代の年金「繰下げ」はアリか?ギャンブルとして考えてみる。

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2016年にこちらの本が出て話題になりました。

人生100年時代到来というニュースやテレビ番組が一通り過ぎて、なんとなく老後がとてつもなく長くなる不安ばかり煽られていますが、実際、人によって寿命は異なるでしょうし一概には言えないと割り切ってしまうのも心の平穏を得る一つの防衛手段だと思います。

 

ただ、もう一歩だけ踏み込んで、もし100歳まで生きた場合に自分も含めて、周りの家族にも迷惑かけないで過ごせるのか実際にシミュレーションしてみて、本当のところはどうなのか?と考えてみるのも、また、心の平穏を得る手段だと思います。

 

そこで今回は、年金にスポットを当てて、何歳から受給開始するのが良いか、検討してみました。

年金は、通常65歳から受給開始しますが、本人の申請で「繰上げ」「繰下げ」ができます。これにより、65歳スタートの年金受給額を元に、それぞれ年金額が減ったり、増えたりします。

どうするのが、人生のマネー戦略において有利なのか?を考察してみます。

 

年金の繰上げ・繰り下げとは?

まず、年金の繰上げ・繰下げ制度についてご紹介します。

65歳支給開始の年金は、それより前に60歳まで「繰上げ」たり、逆に70歳まで「繰下げ」ることができます。

 

ただ、早くもらい始める「繰上げ」にはペナルティがあり、遅くもらう「繰下げ」は特典があります。

  • 繰上げペナルティ 繰上げた月数 × -0.5%減額 (最大5年繰上げ=30%減額)
  • 繰下げ特典 繰下げた月数 × +0.7%増額 (最大5年繰下げ=42%増額)

65歳時点を基準に、早いと減るし、遅いと、年金額が増えるというシンプルな考え方です。

 

また、繰上げてしまうと、減った受給額が一生続きます

同様に、繰下げると、増えた受給額が一生続きます

 

 

 

「繰上げ」は絶対にやめましょう。

まず、「繰上げ」ですが、年金支給額の30%減が一生続くので、長生きすればするほど、ダメージが大きくなります。長生きリスクに備えるのと真逆の行動になってしまいます。

 

例えば、標準的な会社員の100歳までの年金総額を比較すると、

65歳開始 → 100歳までの年金総額9500万円

60歳繰上げ → 100歳までの年金総額7500万円

その差額は2000万円が減額されてしまいます。

これを補填できる資産2000万円を現役時代に作れれば良いですが、だったら65歳までその資産を使って、普通に65歳から年金をもらった方が、年金総額は当然多くなります。

 

また、100歳までと言わず、平均寿命85歳までの年金総額を比較しても、

65歳開始 → 85歳までの年金総額5280万円

60歳繰上げ → 85歳までの年金総額4600万円

約600万円減額されます。

 

これが「繰上げ」の大きなリスクです。

繰上げで得られる60〜64歳の年金受給総額は、たった「900万円」ほど。

そして、76歳を超えた瞬間に、65歳で受給開始した人に年金総額は逆転されます。私の親もそうですが、いまどきの76歳は元気で、今の現役世代の7割はいき続けるでしょう。

繰上げで利益が最大化するのは65歳までに死去する場合のみで、それ以降は利益は減少していくわけです。

平均寿命まで生きないと考え、減額分600万円を賭け、早期に死亡した場合に900万円得るギャンブルと考えられます。

平均寿命が伸びている現状で、このギャンブルかなり分が悪く、勝っても嬉しくないという誰得の制度です。

 

「繰上げ」るなら働く覚悟で。改正高年齢者雇用安定法。

というわけで繰り上げるくらいなら、できる限り働きましょう。

ご存知の方も多いと思いますが、2013年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行されています。

60歳定年する人で、その後も就業を希望する人を会社は雇用する義務があるという法律です。

65歳までの雇用が義務化されたのですが、すぐ全員ではなく段階的に施行されており、最終的に2025年からは希望者全員が65歳まで継続雇用を約束されます。

 

詳しくは下を

改正高年齢者雇用安定法の経過措置

  • 2013年4月1日 ~ 2016年3月31日 61歳
  • 2016年4月1日 ~ 2019年3月31日 62歳
  • 2019年4月1日 ~ 2022年3月31日 63歳
  • 2022年4月1日 ~ 2025年3月31日 64歳
  • 2025年4月1日 ~ 完全施行(希望者全員の65歳までの継続雇用)

 

私の場合は60歳時点で完全施行開始しているので、希望すれば65歳まで働くことは可能です。ただ給与水準は下がります。それを補填する国の制度を活用すれば、現役世代とほぼ差のない収入で65歳まで働けます。それ以降ももちろん元気であれば働いて収入があれば、ゆとりのある生活を送ることが可能です。

 

また、自営業の方はもともと定年がないと思いますので、事業継続できる限り、続けていく方が良いでしょう。(厚生年金が無いので、年金依存度が低いため、必然的に働く必要があるケースも多いと思います。)

という訳で「繰り上げ」のリスク600万円で、「早逝」に賭けるギャンブルはやめた方がいいでしょう。

 

 

「繰下げ」受給はどうなのか?

「繰下げ」は、70歳から受け取れば、最大42%も年金が増額するメリットがあります。ならば繰り下げるべきでしょうか?

長生きするほど、このギャンブルに勝てるので、WinにWinが重なるので嬉しいギャンブルでもあります。

 

しかし、この場合のリスクは、予定より早く死去すると年金受給期間が短く、受給総額が減るデメリットです。

特に65〜69歳の雇用が保証されず、体力が衰えてるかもしれない微妙なお年頃に年金受給がないと厳しいかもしれません。

 

「繰下げ」た場合の最大リスクと、何歳まで生きるとリクープできるか、そして、100歳でのリターンはどのくらいもらえるかについてシミュレーションしてみましょう。

 

会社員Aさんと自営業のBさんの場合「繰下げ」の検証

例えば、以下のような2人をモデルケースとします。

一般的な会社員と生涯自営業だった2人で、両方とも70歳まで「繰下げ」て受給した場合と、65歳から受給した場合の年金総額の推移と差額をみてみましょう。

  • 会社員Aさん:65歳で年金支給総額(国民年金+厚生年金)が会社員平均の264万円(月額22万円)
  • 自営業Bさん:65歳で国民年金満額受給の77万円(月額6.4万円)

 

 

会社員と自営業の年金受給総額の推移表

  Aさん(会社員平均・年264万) Bさん(国民年金満額・年77万)
年齢 繰下げ受給 65歳受給 差額 繰下げ受給 65歳受給 差額
65 0 264 -264 0 77 -77
66 0 528 -528 0 154 -154
67 0 792 -792 0 231 -231
68 0 1056 -1056 0 308 -308
69 0 1320 -1320 0 385 -385
70 375 1584 -1209 109 462 -353
71 750 1848 -1098 218 539 -321
72 1125 2112 -987 327 616 -289
73 1500 2376 -876 436 693 -257
74 1875 2640 -765 545 770 -225
75 2250 2904 -654 654 847 -193
76 2625 3168 -543 763 924 -161
77 3000 3432 -432 872 1001 -129
78 3375 3696 -321 981 1078 -97
79 3750 3960 -210 1090 1155 -65
80 4125 4224 -99 1199 1232 -33
81 4500 4488 12 1308 1309 -1
82 4875 4752 123 1417 1386 31
83 5250 5016 234 1526 1463 63
84 5625 5280 345 1635 1540 95
85 6000 5544 456 1744 1617 127
86 6375 5808 567 1853 1694 159
87 6750 6072 678 1962 1771 191
88 7125 6336 789 2071 1848 223
89 7500 6600 900 2180 1925 255
90 7875 6864 1011 2289 2002 287
91 8250 7128 1122 2398 2079 319
92 8625 7392 1233 2507 2156 351
93 9000 7656 1344 2616 2233 383
94 9375 7920 1455 2725 2310 415
95 9750 8184 1566 2834 2387 447
96 10125 8448 1677 2943 2464 479
97 10500 8712 1788 3052 2541 511
98 10875 8976 1899 3161 2618 543
99 11250 9240 2010 3270 2695 575
100 11625 9504 2121 1136 1050 86

表にしてみると、明らかになりますが、「繰下げ」のメリットって意外と少ない

 

5年繰り下げで、年金受給額が上がりますが、65〜69歳の5年間の未受給期間で本来もらえる年金額を解消できるのは、Aさん、Bさんいずれも81歳までかかってしまいます。ここが損益分岐点です。

つまり、繰下げた場合は、80歳までに死んでしまうとちょっと損します。

 

 

65〜69歳までに貰えるはずの年金総額

  • 会社員Aさん:1320万円
  • 自営業Bさん:385万円

これが「繰下げ」の最大リスク金額(掛け金)になります。

 

平均寿命84歳まで生きた場合のリターン

  • 会社員Aさん:345万円 +26.1%
  • 自営業Bさん:95万円 +24.6%

掛け金に対する増加分の金額です。20年後の約25%程度のリターンでは少ないですね。。。

 

100歳までの生きた場合のリターン

  • 会社員Aさん:2121万円 +162.2%
  • 自営業Bさん:607万円 +157%

100歳まで生きた場合のリターンは大きいですね。

会社員では、リスク額に対する最大リターンが2倍もないですね。

会社員Aさんの例だと、最大リターン2121万円 ÷ 最大リスク1320万円 = 1.6倍ほどです。Bさんもほぼ同じ。

期間は、65〜100歳の35年間、年4.57%ほど積み上がってます。

 

ライフプランとして、比較的若い65歳〜70代の間の年金支給総額がマイナスで、81歳になってようやくプラスに転じるプランは少し微妙ですよね。

高齢になるとともに支出も減るなら、必要な時に(健康な時に)受給できない構造はイマイチです。

 

私は81歳なんて余裕、100歳も健康に生きてるに賭けたい人は、70歳まで年金を待つのがいいでしょう。

65歳でリタイアし、健康なうちにある程度支出して将来の支出を絞れると考えている人は、「繰下げ」しない方が良いでしょう。

 

 

年金繰下げをおすすめする人は?

唯一、年金の繰下げをおすすめしたいのは、65歳〜69歳もしっかり働きたい人です。

それは、年金は支給されると雑所得として「給与」と合算して「所得税」がかかるからです。

もちろん、年金の控除額があるので税金比率は少ないですが、総合課税として、給料と通算されて「所得税」額が算出されるため、一定額以上収入があると、年金をもらうと、税金が多くなってしまうからです。

 

という意味で65歳以降も働く、事業する、不動産の大家さんなど固定収入を得られる可能性が高い人は、「繰下げ」受給はメリットが大きいと言えます。

少なくとも年金支給額以上の収入見込みがある人は「繰下げ」のメリットはありえます。。

 

 

 

働けるまで働いて、無理だと思った時点で「繰下げ」受給開始を申請する

また、豆知識ですが、年金の受給開始は、受給申請を自分でした時点で開始されます。65歳になって自動的に年金が振込がスタートするわけではありません。

自分で年金事務所に書類を提出しない限り、繰下げ状態になっています。

 

だから、65歳でも働いてるうちは、年金受給申請をしない。働けるまで働いて、70歳にまでに仕事がしんどくなったら退職し、「繰下げ」受給開始申請を行う。

という年金の進め方はテクニカルに可能です。

 

「繰下げ」ボーナスは、繰下げ月数 × 0.7%のプラス受給になるので、

もし、3年繰下げたら25%年金増額ボーナスとなります。

その後、じっくり長生きすればOKです。

 

 

 

まとめ:繰上げ・繰下げは勝ち目の薄いギャンブルのようなもの。

結論から言えば、年金の「繰上げ」「繰下げ」は個人的に自分の寿命をかけたギャンブルみたいなものです。

早く死ぬ、長生きするがある程度読めないと勝てません。

自分の寿命がわかる神様のような人以外、やらない方がいいと思います。

 

そして、ギャンブルと考えた場合も

ベットする金額(60〜64歳の年金総額)に対し、100歳まで生きてもリターンが2倍もなく(たったの1.6倍)

とても割の悪いギャンブルと言えます。

 

とはいえ、そもそも年金額は少ないので、なんとか老後も使えるお金を増やしておきたいものです。

年金だけに頼って老後を迎えるのは、資金的リスクがあります。

 

 

やっぱり「繰下げ」以外の方法で老後資金を現役時代に作っておくのが正道だと思います。

 

定年後3000万円必要は本当!?21世紀版をちゃんと試算してみた。

巷で言う3000万円説の真偽を検討した記事です。

平均年齢の84歳までのシミュレーションだと、実際は、平均老後資金1800万円でした。

 

そして、その1800万円を現役時代に20年で作る方法も検討してみました。

老後資金で”年14万円”のへそくりを生み出す老後のマネープラン

このマネープランを実施しつつ、ある程度成功してきたら、人生100年に向けてさらに資産運用を加速させると言うのが一つの方法だと思います。

 

 

参考文献

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