政府が、年金問題の先送りし、就労年齢を70歳まで引き上げる方針を打ち出すと、企業は防衛策として、40代半ば社員を対象に早期退職制度(リストラ)をはじめました。これまでのリストラと違い、利益をあげている企業が率先して実施していること。これは、現在の社員全員の雇用を義務づけられると、企業の人件費が高騰するリスクがすぐそこに見え始めているからです。
コロナショックから始まるリセッションの中ではさらに推進されることが想像されます。仕事が好き!だから俺は働き続けると会社のために身を粉にして働いていたとしても、40歳を超えれば、容赦ないリストラのリスクに晒され、70歳まで働くことすら難しい時代になっているのです。
そんな時代に対抗する手段として、オススメしたいライフスタイル・考え方が、今回紹介する「FIRE(ファイア)」Financial Independence(経済的自立)と Retire Early(早期リタイア)の頭文字をとった造語で、雇われ仕事をすることなく、不労所得だけで毎年の生活費を賄えるように貯蓄と節約に励みに、できるだけ早くリタイアしようとする考え方です。
FIRE 最速で経済的自立を実現する方法 (amazon)
今回は、この最速で経済的自立を実現する「FIRE(ファイア)」を誰にでも10分ほどで理解できるように要約し、さらに、私も実践する投資戦略や副業戦略を具体的に紹介し、最後には、あなたが経済的自由を得るためのゴールを設定し、第一歩を踏み出す準備ができるでしょう。
FIREとは?
この本の著者は2ドルの資産からスタートし、たった5年で125万ドルの純資産を築いて、FIRE(経済的自立)を手に入れました。
この話だけ聞けば、かなりマユツバで怪しいのですが、書籍を読むと彼のFIREを実現していく戦略が細かく丁寧に記載されており、また、同じように実現している人たちの実例も紹介されていて、全くの夢物語ではないことと理解できます。
また、著者自身もリーマンショック後の2010年からの5年間の落ち込んだ経済が大きく回復・成長する波に乗る幸運もあったと解説し、想定よりも早くFIREできたとしています。
ということは、コロナショックで経済が低迷した今はチャンスなのかもしれません。彼の戦略を使えば同じ5年でFIREを再現できる可能性はあります。
FIRE(ファイア)を目指すべき3つの理由
「経済的自立を得て、早期リタイアすること」がFIREということは理解いただけたかと思いますが、もしかしたら、やや不真面目な人ほど共感しやすいのかもしれません。
①雇用、年金、インフレなどへのリスクヘッジ
特に一般的な人ほど、仕事が好きで、規範やルール、一般常識を重んじるため、そもそも、なぜ、早期リタイアしなくてはいけないのか?と素朴な疑問を抱いているかもしれません。そんな人は、ぜひ目の前にあるリスクを見逃さないように注意してほしいと思います。
まず、あなたが「生涯現役を望むこと=あなたが生涯働けること」ではない。からです。
あなたが仕事が好きで、一生続けたくても、会社の上司が変わる、ビジネスが古くなる、大不況の影響など、自分の実力以外で、職を失うことは十分にあり得るリスクです。
雇用のリスク以外にも、将来の年金の所得代替率の減少や、平均寿命が伸びることで必要な貯蓄が増加する、将来的なインフレリスクなど、現役世代は、親の世代と比べても、たくさんリスクに晒されているのです。
また、このリスクが恐ろしいのは、人生の終盤に現実化すると、復活がかなり難しいことです。
50歳で、2000万円の退職金で早期リタイアしても、就職先が見つからず、3〜4年で使い果たし、住宅ローンを抱えて、まだまだ10年以上リタイアまで時間がある。かなりの難題です。
しかし、FIREを実現していれば、視界は大きく異なるでしょう。
FIREでは、経済的自立を手にしておけば、早期リタイアするかしないかは「自由」に決めれば良いのです。生涯現役を貫いても良いし、すぐリタイアしても良いのです。いつやってくるかもしれないリストラに怯えることも無くなります。
②時代の恩恵を生かすため
一昔前であれば、FIREという生き方は、生まれながらの金持ちか、成功した起業家など限られた人しかできないものでした。
しかし、この時代は全ての人に機会が与えられています。
ネットで情報が安く手に入り、格安の手数料で投資でき、副業も低コストではじめられ、FIREを実現するために必要な環境が整いはじめています。そして、Youtuberや仮想通貨など、宝くじより期待値のある手法も広がっています。一攫千金を目指さなくても、少しずつ積み上げることで「経済的自由」を手に入れることも可能です。
この恵まれた時代に生きている恩恵を行使しないのは、勿体無い。
この時代に与えられた機会をスルーするか、それとも生かすか。迷うべき理由を私は知りません。誰でもFIREを目指して得することはあれど、全く損はないのです。
③自分の人生の選択肢を手にするため。
これまでの画一的なサラリーマンの人生プランを盲信すれば、「22歳新卒で社会人になり、65歳まで(70歳まで)40年超働き続けて退職。残りの老後30年は所得代替率40%の年金収入で過ごすこと」になります。これが唯一の人生プランといっても良いでしょう。
しかし、働きづくめでリタイアしても、かなり慎ましく生きなければならず、30年の老後も、仕事人間はうまくいかせず、鬱屈した時間を過ごすと言います。
人生で最も限られた大切なものはお金ではなく、「時間」です。
そして、それをどう過ごすか決める選択肢を持つか持たないかで、人生の豊かさは変わるでしょう。
70歳まで働かなければならない状態でい続けるか、FIREを実現し、好きなタイミングでやめる選択肢を持ち、それを行使するかを決められる人生の主導権を自分の手に持つか。これもまた疑問の入る余地なく後者がおすすめでしょう。
FIREを実現する戦略
FIREを目指す理由が腹に落ちたあなたは、すでに戦略を実践する準備ができています。本書では7つのステップでFIREを目指します。
(本当のマネープランを把握する)
ステップ1:自分の目標とするあなたの数字を作る。
まずは、あなたの人生の地図に目標地点(ゴール)を刻みます。
これは、人生のプランとそれを実現する「マネープラン」を作ることです。
人生で成し遂げたいこと、どんな人生を送りたいかぼんやり考えている人でも、「人生のマネープラン」を正確に持つ人はあまりいません。
実際、投資したい貯金したいと考えている人は多いですが、ではいくら必要なのか?どれだけのお金を目標にしているのか?といえば、明確なゴールを持っていない人が多いのではないでしょうか?
お金は数字なので、無限に追い続けることも可能です。
100万円貯めれば、1000万円。1000万円貯めれば、1億円。1億貯めれば10億円と欲しい額が増えていく。しかし、人生において必要な金額以上を目指して、リスクを取り続ける必要はありません。
この人生のゴールである投資資産が、以下の簡単な数式で決められるのがFIREでも最も肝となる考え方の一つです。
FIREに必要な投資資産= リタイア後の年間支出額 × 25
これは投資資産の運用益の4%分で必要な年間支出を賄う考え方です。
年間400万円使いたい人なら、その25倍(400万円×25=)1億円がゴールです。1億円の運用益4%分で400万円を賄い、元本を減らさず経済的自立を得た状態を生涯続けることができます。
※リタイア後も安定的な収入がある場合。
不動産業や副業を持つ場合、年間支出額の一部を賄えるので、より少ない資産がゴールになります。例えば、年間支出400万円のうち、200万円を安定収入でまかなえれば、上の計算式は200万円×25=5000万円となり、非常にFIREが実現しやすくなります。
当サイトでは、このFIREの計算を簡単にできるFIRE計算ツールを作りましたので以下の記事から活用ください。
10年後アーリーリタイアに必要な「お金」はいくら?(FIRE計算ツール公開)
ステップ2:いま持っている金額を計算せよ。
あなたの純資産=総資産−総負債ではなく、「収入を生み出す投資資産」を把握します。
総資産の中に持ち家は含まれますが、投資資産ではないのが注意です。
株や現金などの流動資産は投資資産として活用できますが、持ち家や金銀財宝などは、それらで収入を得られなければ、投資資産にならないのです。
(支出を減らし、貯蓄を増やす)
ステップ3:お金に対する考え方を根本的に改めよ
収入や資産が増えるとともに、資本主義的価値観の人々の消費行動は大きくなります。
時計や車、家、別荘、クルーザーなど支出は際限なく増やせます。しかし、それは本当にいま必要な消費かを毎回考えるべきです。
いま目の前にある1万円は、将来の数万円。もしくは、あなたの将来の時間の数時間分もの価値があります。
これを意識して、必要のない支出を減らすことが、FIREにとって重要なお金の考え方です。
ステップ4:貯蓄率をあげる。
予算を立てず、貯蓄に最も大きな影響を与えるものだけに集中せよ。
3大支出・・・住居費、交通費(車)、食費を切り詰めるだけで2割以上節約できる。
アメリカなので、交通費=自家用車でコストが高い。首都圏に住む人は交通費はさほど多くない人も多いだろう。
日本では、住居費、保険料、通信費(携帯代)が、3大支出と考えられる。
特に保険料は無駄が多い。保険会社の利益のためにせっせとお金を使うのはもうやめにしたほうがいいだろう。
(収入を増やす)
ステップ5:9時5時の仕事をハック[工夫、効率化]せよ
FIREは雇われた会社の仕事を可能な限り、短時間で効率よく済ませることを推奨する。
そして、できれば、リモートワークができるように交渉し、自分の時間を増やす戦略を取れという。
コロナショックでまさに事務職員はリモートワークを強制的に推進されたが、これを機に日本でも在宅勤務がOKになれば、FIREはさらに近くなる。
ステップ6:儲かる副業を始め、収入源を複数持とう
仕事を効率化し、得られた時間を使って、副業を始め収入を増やすのが、FIREのメイン戦略である。支出を減らすのは限界あるため、副業による収入増をすべて貯蓄すれば、短期間でFIREを実現することができる。
ステップ7:できるだけ多くのお金をできるだけ早く、できるだけ頻繁に投資せよ。
アインシュタインもその効果を認めているが、投資による複利は人類の大きな発明の一つだ。時間が価値に変換され、時間が長いほど指数関数的に膨大になっていく。
できるだけ若い頃から多くのお金を運用できれば、資産形成のスピードが違う。
若い人ほど、リタイアが早く出来る逆説的な現実は40代の私にとっては悲しい現実ではあるが、今からでも決して遅くはない。
投資戦略はアメリカ人なので、インデックス投資のETFなどを上げているが、彼自身はFacebookやAmazonなどのグロース株を取得している。投資ステージに応じて、リスクをコントロールするという投資の基本を押さえていれば良い。
投資の基本方程式
FIREに限らず、投資の基本方程式は以下の通り。
投資収益=(投資資産+(①年収−②年間支出))×③利回り
①年収を増やし・・・本業を効率化し、副業を行う
②支出を減らし・・・三大支出を集中して減らす。
③利回りをよくする・・・投資のTIPSはたくさんあるが、早いほど複利のメリットがある。
10分でわかる!FIREのまとめ。肝は「ゴール設定」と「収入の拡大」
FIRE 最速で経済的自立を実現する方法 (amazon)
よくある資産形成の話は、「節約」と「投資プラン(ネタ)」がほとんどだが、FIREは、明確な「ゴール設定」の方法と、「収入を増やす」ことに比重を置いており、そして現代の恩恵として、それを実現する難易度がかなり低くなっていることを伝えている。
すぐにでもできることは、
・あなたの将来の人生のライフプランに必要な年間支出額を見積もること
その25倍の金額があなたの人生のマネープランのゴールだ。
達成する金額ゴールが分かれば、あとはルート設計をするだけだ。
どれだけ収入を増やし、支出を減らし、貯蓄する必要があるか?
何年後のリタイアを目指すかで、必要な年間貯蓄額を試算するツールを私が用意しているので、以下の記事を活用し、さらにFIREの実現の輪郭を描いて欲しい。
10年後アーリーリタイアに必要な「お金」はいくら?(FIRE計算ツール公開)
Sponsord link